背景と目的

乳酸菌、ビフィズス菌等を用いた豆乳発酵物がヒトの健康の維持増進を目的に広く用いられており、腸内有用菌の増殖促進、有害菌の増殖抑制、また腸内代謝産物の有機酸濃度上昇等の腸内環境の改善によって多くの健康効果を有することが報告されている。

今回、糞便中細菌叢と有機酸濃度の関係についての検討を行った後、乳酸菌混合発酵物(SFP) 1ヵ月飲用における腸内環境の改善について糞便中細菌叢と有機酸濃度を解析し、関連を検証した。

【方法】

試験1:健康な7歳から80歳までの社内関係のボランティア男女16名から糞便を採取し、NGSによる糞便中細菌叢解析、GC/MSによる有機酸分析を行った。

試験2:別の健康な10歳から49歳までの社内関係のボランティア男女7名を対象とし、SFP(豆乳を Lactobacillus plantarum BF-LP284株、Lactococcus lactis ALAL018株、Saccharomyces cerevisiae ALAY001株等を用いて発酵、加熱殺菌して調製)をサイクロデキストリンで包接したサプリメントを1か月間飲用させ、飲用前後の糞便中細菌叢、有機酸濃度の解析を行った。各試験は株式会社エイエルエイ社内倫理規定に基づき行った。

【結果】

試験1:バクテロイデス、プレボテラ、ルミノコッカス(Ru)の3属が組成比率の高い属として観察された。属レベルで有機酸濃度との相関性をみたところ、Ru属の占有率と有機酸濃度に有意な正の相関(P<0.05)が認められた。

試験2:SFP飲用後にビフィドバクテリウム(Bif)属の増加が認められ、さらに有機酸濃度が有意に増加した。しかしRu属ならびに有機酸産生菌として同定されている菌種の占有率との相関性は見られなかった。

【結論】

SFPはRu属の占有率には影響しなかったが、Bif属の占有率ならびに濃度を上昇させ、腸内環境を改善する可能性が示唆された。