【材料および方法】

試料
主に市販されている缶入りまたは紙パック入りの飲料を試料とした。各試料をそれぞれ小試験管2本に3mlずつ分注し、被摂取試料とした。なお、生理食塩水を対照とした。

使用菌株
ヒト由来の病原性大腸菌O157:H7(YMH)および非病原性大腸菌(128)を使用した。YMH株は感染研細菌部の田村博士より分与された。(ここに感謝する)。

使用培地
増殖用にはTrypticase soy broth(BBL)を、菌数測定用にはTrypticase soy agar(BBL)を使用した。

摂取菌量
約3×10の6乗/mlの菌液100μlを試料に添加した。(最終濃度は約1×105ml)。摂取後37℃で培養した。摂取後0時間の各試料の菌数は生理食塩水の菌数をもってあてた。

菌数測定
培養後試料を10段階希釈してその50μlをTrypticase soy agar培地に塗布し、37℃24時間好気性培養した。酸性試料は希釈前に1N NaOHでpH6前後に修正した。

【成績】

YMH株6時間培養成績(0時間培養)との比較は次の通りである。

天然果汁(8件)
いずれも軽度の減少(菌数は0時間の菌数の1/10より大)を示した。

炭酸飲料(7件)
3件は軽度の減少を示し、他の4件は1/1000ないし1/10000以下に激減した。後者はいずれもpHが3未満であった。

果汁入り炭酸飲料(6件)
3件は軽度の減少を示し、他の3件は1/100ないし1/1000以下に顕著な減少を示した。

清涼飲料水(5件)
4件が軽度の減少を示し、1件は1/100程度に顕著な減少を示した。

乳酸菌飲料、発酵乳(6件)
1件を除いて、1/100ないし1/1000以下に顕著な減少を示した。1件(殺菌製品)は軽度の減少を示した。

ビール(2件)
1件は1/10以下に減少し、他の1件は1/1000以下に強度の減少を示した。

コーヒー(2件)
1件(微糖タイプ)はほとんど変化なかったが、他の1件(レギュラータイプ)は10倍以上の増加を示した。

緑茶、ウーロン茶、ほうじ茶(6件)
いずれも10倍ないし100倍以上の増加を示した。

牛乳(3件)
いずれも100倍以上の顕著な増加を示した。

紅茶飲料(2件)
軽度の減少を示した。この2件は酸味料または酸味料と果汁入り製品であった。

その他(3件)
いずれも1/10000以下に激減した。このうち1件は調味酢で、5倍希釈でも1/10000以下に減少し、10倍希釈では1/100以下に減少した。他の2件は大豆の乳酸菌発酵製品で(一つは原液で、他は上清)、3倍希釈でも1/10000以下に激減した。

短時間培養成績
緑茶A商品、牛乳B商品、炭酸飲料C商品についての30、60、90、120分培養成績の時間的経過は、Aでは0時間の1.3倍、1.5倍、2倍、3.7倍;Bでは2倍、3倍、7倍、14倍;Cでは7/1000、5/10000、1/10000、<1/10000となり、A,Bでは短時間に増加し、特にBでは顕著であった。反対にCでは顕著な減少が認められた。

【考察】

発酵乳、乳酸菌飲料、炭酸飲料、(低pHのもの)、ビールなどは病原大腸菌に対する殺菌的作用を示し、病原大腸菌の汚染食品との食べあわせにおいて予防的効果が期待できる。一方、市販の日本茶および牛乳は胃内において大腸菌の増殖に促進的に作用する可能性が示された。後者の原因は6.5前後のpHと牛乳では乳糖の存在があげられる。