【方法】

1)大腸癌発症抑制作用は(独)理化学研究所で系統が維持された5週齢のCF#雄性マウス(1群20匹)を用い、対照群には基礎飼料のみを、投与群には3%(w/w)の割合でBFを添加し自由摂食させた。摂食開始と同時に1,2-ジメチルヒドラジン(DMH)水溶液を週1回、10週にわたり腹腔内投与(20 mg / kg体重)し大腸癌を誘発した。投与35週目に大腸腫瘍の個数および直径を測定し、癌病変の観察を行った。

2)抗変異原性試験は、エームス試験法を用い測定した。Salmonella typhimurium TA100(ヒスチジン+復帰変異)を用いて、変異原物質4-ニトロキノリン-1オキシド(4NQO)、N-メチル-N’-ニトロソグアニジン(MNNG)、および3-アミノ-1-メチル-5H-ピリド[4,3-b]インドール(Trp-P-2)に対するBFの抗変異原性を検討した。またBFの抗変異原性活性成分を探索するために、HP-20カラムクロマトグラフィーにてBFを6分画し、Trp-P-2に対する抗変異原活性を検討した。

【結果と考察】

1)DMH誘発大腸癌において、大腸部位に発生した腫瘍は病理組織学的には全て腺癌であった。大腸腫瘍の発生率は、対照群94%に対してBF群65%であり、対照群に比べてBF群は有意(p<0.05)に低率であった。マウス固体当たりの腫瘍数は、対照群で4.0±2.7個(平均±標準偏差)に対してBF群は1.4±1.5個(p<0.01)と有意に減少した。腫瘍の直径は投与群が3.1±1.7 mmであったのに対しBF群で2.5±1.3 mmと有意(p<0.05)に小さかった。以上の結果からBFは、DMH大腸癌の発症および大腸腫瘍の増大を抑制することが示され、BFの抗腫瘍作用が期待された。

2)抗変異原性試験においてBFは、変異原物質4NQO、MNNGおよびTrp-P-2による突然変異を濃度依存的に抑制した。BF分画物は、Trp-P-2にたいする抗変異原性試験において、メタノール分画に56%、アセトン分画に47%の突然変異抑制を認めた。このメタノール分画およびアセトン分画には、薄層クロマトグラフィーにより大豆サポニンやイソフラボン等のポリフェノール類が含まれていることが確認された。サポニンに関しては、結腸癌の培養細胞の増殖を阻害する活性も報告されており、これにはサポニンの糖鎖が短くなっているほど活性が強くなり、ソヤサポゲノールA,Bが最も強いことが報告されていることから、BFにおいても大豆の発酵によりサポニンの糖鎖が短くなり、抗変異原性が高まっていると考えられる。このことから、BFの大腸癌発症抑制作用にはBFに含まれるサポニンなどのポリフェノール類が関与していることが推察される。

【結論】

乳酸菌の混合培養で得られた発酵生産物(BF)は、DMH誘発マウス大腸癌を抑制し、その発症メカニズムの一つとして抗変異原性が示唆され、抗変異活性成分としてサポニンなどを含む分画に活性が認められたことから、BFは抗腫瘍効果が期待されるサプリメントとして有用と思われた。