【症例】

82歳、女性。主訴は舌および口腔内粘膜に灼熱感を伴う疼痛。現在不眠症、便秘症で処方を受けている。現病歴としてはかかりつけの歯科医にて都内某大学病院心療歯科を紹介され、3年余り通院するも症状が改善せず通院を中止。家族の勧めで鍼灸院に転院。疼痛緩和のために鍼およびアロママッサージの施術を受けるが、やはり症状が改善せず、鍼灸師の紹介で当院に来院。現症:舌は紅舌で舌苔が付着。口腔内は軽度な乾燥。口腔内所見:両顎とも局部義歯が装着され、前突傾向があり口呼吸となっている。

【結果】

初診時口腔内水分測定は27.5%、唾液pHが5.5、口唇閉鎖力測定では5.2Nであった。治療方針として①サプリメントとしてBFの飲用、②口唇閉鎖力強化のためのパタカラによるトレーニング、③クラスプレスデンチャーの作製の3本立てとした。治療3ヵ月後の治療終了時(義歯装着後2週間目)には、口腔内水分測定が30.2 %、唾液pHが6.5、口唇閉鎖力が6.3 Nとなり、舌の痛みも完全に消失した。全身症状として初診時にあった不眠と便秘も消失した。

【考察】

初診時の各種検査ではpH以外に顕著な異常が認められなかった。しかし患者に便秘傾向ならびに不眠傾向が強いことから、本症例の原因の第一は腸内バランスの崩れであり、BFの飲用で腸内環境が整えられ舌の痛みが消失したと考えられる。また義歯の不具合により咀嚼が困難となることで刺激唾液分泌量の低下を招き、また口唇閉鎖力がやや低いことから口呼吸により唾液が乾燥したことも原因として考えられる。パタカラによる口唇閉鎖力増大で鼻呼吸習慣となることに加え、クラスプレスデンチャーの使用で舌および口唇頬粘膜の擦れが消失したものと思われる。

【結論】

臨床においては患者の病状にあった各種療法を組み合わせることが重要であり、其の根本として疾病の内因に働くBFを用いる意義は大きいと考えられる。