【方法】

1)生源による界面活性剤の空腸微絨毛障害抑制能評価の実験法:

BALB/cマウス (雄, 8週齢) を実験動物として用いた。粘膜障害のモデルとして界面活性剤である食器洗剤(ジョイ/P&G/神戸)を用いた。実験群は、 MF粉末飼料飼育を基本として①未処置(コントロール)群(n=4)、②蒸留水0.5ml経口投与群(n=2)、③0.1%界面活性剤0.5ml経口投与群(n=4)、④1 %生源を含むMF粉末飼料飼育に0.1%界面活性剤を0.5ml経口投与した群(n=4)の4群とした。②,③,④群について強制経口投与10分後に屠殺し、空腸を採取し電子顕微鏡的観察を行った。

2)空腸微絨毛の走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)観察法: 空腸微絨毛の表面構造を評価するために、臨界点乾燥、オスミウムコートなどを行いSEMにて解析、さらに空腸微絨毛の内部構造を評価するために、エポキシ樹脂包埋、超薄切片作製、 電子染色などを行いTEMにて解析した。

【結果】

①通常飼育 (コントロール) 群:空腸の微絨毛は規則的に配列しており、その内部構造は良好に保持され正常像として観察された。②蒸留水0.5 ml経口投与群:空腸の微絨毛は①のコントロール群と同様に正常像であった。③0.1 %界面活性剤0.5 ml経口投与群:空腸の微絨毛は障害を受け破壊されており、 球状形のミセル様構造体として管腔内に放出された像として観察された.④1 %生源を含むMF粉末飼料飼育に0.1 %界面活性剤0.5 ml経口投与群:空腸の微絨毛は①のコントロール群と同様に正常像として観察された。

【考察】

以上の結果より、生源は界面活性剤(食器洗剤)の空腸微絨毛の障害破壊を著しく抑制することが明らかになった。つまり、 身体に有害な化学成分から消化管粘膜を保護する化学的バリアー効果を有することが示唆された。この抑制機構として、界面活性剤(食器洗剤)によって、 微絨毛が球状形のミセル様構造体として管腔内に放出された破壊像を踏まえ、生源の消化・吸収成分が空腸微絨毛の細胞膜の内在性タンパク質の疎水性効果を保持すること、 すなわち、空腸微絨毛の細胞膜を安定化することが考えられた。この実験結果から胃腸障害の臨床的改善に敷延して考えることができる。

【結論】

生源は消化管粘膜の化学的バリアーに対して優れた保護効果を有することが証明された。