【症例】
症例32歳男性。16歳時に頻回の下痢および粘血便主訴に近医受診し諸検査にて潰瘍性大腸炎の診断を受ける。30歳を過ぎた頃からステロイドの投与量が10gを越えるようになった。統合医療を求めて平成19年8月9日当院受診となる。初診時では精神障害(自殺企図)及び骨粗鬆症による腰椎の圧迫骨折を認めた。既往歴:特記すべき事項なし。受診時現症:169cm、55kg、眼瞼球結膜黄疸(-)眼瞼結膜貧血(-)無表情を呈する以外、特に異常所見を認めない。受診時検査所見:WBC9100(好中球80%、リンパ球16%、単球3%)、PLT346000、CRP0.22大腸内視鏡初診日より乳酸菌の混合培養により得られた発酵産物(生源)を20g/日とラドン水の飲用2L/日、ホルミシスシートの使用及びホルミシスルームへ期間中40回入室した。
【結果】
平成20年1月16日WBC4300(好中球54%、リンパ球38%、単球5%)、PLT357000、CRP0.15、治療開始後5ヶ月目にてステロイドを離脱することに成功した。大腸内視鏡検査にてS状結腸粘膜病変の改善を認めた。
【考察】
潰瘍性大腸炎の発生機序は未だ不明であるが活性酸素の関与も示唆されている。放射線ホルミシス療法とは1982年にラッキー博士の「大量の放射線は体に有害だが、極少量では刺激となり、寿命をのばすなど身体に有益な作用を及ぼす」発表から端を発している治療法である。今回我々は、腸管内の細菌叢を乳酸菌の混合培養により得られた発酵産物(生源)が 有するバイオジェニックス効果および低線量の放射線に暴露することによる免疫系、酵素系の生体機能向上を期待した。結果は期待通りにステロイドの離脱および大腸粘膜の改善に成功した。しかし、これが潰瘍性大腸炎の統合医療的スタンダードな治療になりえるのか、また、粘膜修復の改善のメカニズムについて今後の症例の積み重ねにより解明されていくものと思われる。
【結論】
乳酸菌の混合培養により得られた発酵産物(生源)及び放射線ホルミシス療法により改善した潰瘍性大腸炎の一例を経験したので報告した。