【目的】
発酵させた豆乳が発がんに及ぼす影響を検討した報告は少ない。今回、豆乳の乳酸菌混合発酵産物(SFP)が大腸発がんに及ぼす影響とその機序を検討した。
【方法】
SFPは豆乳を複数の乳酸菌と酵母で発酵させ加熱殺菌後凍結乾燥して調製した。大腸発がんに及ぼす影響は、CF#1マウスに1, 2-Dimethylhydrazineを用いた化学発癌モデルを用いて検討した。SFPと豆乳は飼料に3%混和し検討期間中投与し、大腸に発症した腫瘤数で評価した。次に、SFPの経口投与(10mg/日)で抗腫瘍作用が得られるBALB/cマウス-Meth-A腫瘍移植モデル系を確立して抗腫瘍作用機序を検討した。即ち、SFPで抗腫瘍効果が得られたマウスの脾細胞を用いてWinn assayを行い(ETratio=10:1)、免疫の関与を調べた。最後にSFPを無菌BALB/cマウスに経口投与し、脾細胞数の変化をBifidobacteriumを定着させたノトバイオートマウスのそれと比較し、SFPの免疫修飾能に腸内細菌が関与した可能性を検討した。
【結果】
SFP群の大腸がん腫粒数は2.4±1.2個/headで豆乳群の4.3±2.7個/headより有意な抑制が認められた(P<0.05)。腫瘍移植モデル系で抗腫瘍効果が得られたSFP群の脾細胞のWinn assayは、移植6日目以降Meth-A単独群に比べ有意な腫瘍増殖抑制が認められた(P<0.05)。また、SFPは無菌マウスに投与しても脾細胞数は変化がなかった。
【結論】
SFPは大腸がん発がん抑制作用を示した。その作用機序は活性化された免疫細胞群が関与したと考えられたが、SFP単独の免疫修飾は極めて弱いと推察された。本学会でSFPの腸内環境改善作用を報告しており(2011年)、SFPの免疫修飾には腸内細菌叢の存在が重要と考えられ、さらなる検討が必要である。