【目的】

近年、抗菌薬耐性菌が増加し、化学療法の限界が顕在化してきたなか、歯周病菌の抑制や口腔内細菌叢の正常化に対するプロバイオティクスの有用性に注目が集まっている。歯周病原菌抑制に関しては、臨床研究の報告はあるが、常在菌叢へのプロバイオティクス菌の定着は難しいと思われる。そこでプロバイオティクス菌の産生する有効成分を用いたバイオジェニクスを予防及び治療法に応用する目的で、歯周病原菌に対する抗菌性の比較を行い、抗菌成分の分析を行った。

【材料と方法】

ヒト口腔ならびに食品より分離したLactobacillus 計53株を被検菌とした。各菌株をMRS培地で24~48時間嫌気培養し、その遠心上清をpH7に調整して被検液とした。指標菌にはPorphyromonas gingivalis ATCC33277株を用い、培養培地中に希釈した被検液を添加して48時間嫌気培養後、増殖を抑制した最大希釈倍率を抗菌活性値とした。抗菌物質の分画は、被検液の溶媒抽出物をSephadex G25カラムで分子量分画を行い、逆相系C18カラムHPLCにて分取、精製した。

【結果と考察】

53株中、強い抗菌活性を示した菌株は口腔由来株L.plantarum (Lp122、抗菌活性値8)、食品由来株L.fermentum ALAL020株(Lf020、抗菌活性値16)の2株であった。各々の抗菌物質分画の結果、Lp122の抗菌性は乳酸の寄与が大きいと考えられた。一方、Lf020 株は乳酸以外に分子量5kDa以下のペプチド様物質が抗菌性を示した。L.fermentum の産生する抗菌物質については低分子ペプチドに関する報告は見当たらないことから、新規物質である可能性が示唆された。

【結論】

L.fermentumのP.gingivalisに有効な抗菌物質は、低分子ペプチドであり、新規物質である可能性が示唆された。