【目的】
プロバイオティクスは、微生物叢のバランスを改善することができるとされている生きた細菌である。近年、口腔疾患の予防効果が期待されているが、歯周病に対するプロバイオティクス菌の抑制効果のメカニズムについては明確にされていない。私たちは、代表的な歯周病原菌であるPorphyromonas gingivalis に対する抗菌活性のあるLactobacillus fermentum ALAL020(Lf020)培養上清中の有効成分の特性を解析した。
【方法】
Lf020の培養上清を37℃・60℃・100℃・121℃で、15分間加熱し、P. gingivalis基準菌株に対する抗菌性の温度感受性を比較した。また、P. gingivalisの他の菌株の抗菌感受性の比較とトリプシン様酵素(ジンジパイン)活性抑制効果の比較を行った。抗菌成分にはサイクリックジペプチドが含まれていることをすでに報告しており、その合成ジペプチドのP. gingivalisとPrevotella intermediaに対する抗菌試験およびジンジパイン活性抑制試験を行なった。
【結果】
Lf020の培養上清は、37℃以上の温度処理によってP. gingivalisに対する抗菌力は半減したが、温度上昇させてもそれ以上抗菌性は失われなかった。P. gingivalisの複数の菌株での抗菌試験結果は株ごとに感受性の差が認められた。また、ジンジパイン活性抑制試験結果は、Lf020培養上清により全てのP. gingivalis株のジンジパイン活性抑制が認められた。合成ジペプチドは、P. gingivalisとP. intermediaに対して5mg/mlで抗菌性を示したが、ジンジパイン活性の抑制効果は示さなかった。
【結論】
Lf020の培養上清は、熱耐性があり、P. gingivalisに対しては、試験すべての株に効果を示したが、感受性差があると考えられた。合成ジペプチドは、Lf020の培養上清から精製された天然抗菌ジペプチドと同様の濃度で抗菌性が認められたが、ジンジパイン抑制活性は認められなかった。そのため、Lf020の培養上清中には、他のP. ginigvalis抑制物質があると考えられる。